うちの営業パーソンは売上げがなかなか伸びないとか、営業組織のマネジメントが上手くいかないなどの問題をお持ちではないですか?
少子化や日本型雇用システムの崩壊、情報化、IT化など、ビジネスをとりまく状況はここ数十年で大きく変化しています。
時代は変化しても、営業の真髄は人のコミュニケーションだから本質は変わらないと思うかもしれませんが、営業が向き合うのは市場です。その市場がどんどん変化してい中、営業方法や営業組織もそれに対応して変化する必要があります。
ここでは、企業の経営者の方や営業マネジメントに関わる人向けに、KPIの導入やIT化、分業化、営業のアウトソーシングなども考慮した、新しい時代の営業組織の構築について説明します。
1、ビジネス環境の変化
営業組織をどのように構築し直す為にまず、最近のビジネス環境は以下の点で変化していることに注目してください。
1.1 モノづくりの崩壊
戦後に良質のモノづくりで経済成長を遂げた日本は、更にそれを世界に売ることで日本ブランドを展開しました。
しかしグローバル化により質は良くても価格面で競争力を失った日本の製造業は次々と海外に製造拠点を移し、日本の製造空洞化が起こっています。
またグローバル化により日用品まで輸入品が増え、
日本で作ったものを日本で売る形の営業は減って、サービスを売る営業が増えています。
1-2 終身雇用制の崩壊
2015年末に発表された厚生労働省の「2014年の就業形態調査」によると、
民間企業に勤める労働者の4割以上がパートや契約社員、派遣社員などの非正規社員であるという結果がでています。
日本では表面的には終身雇用が慣行となっていますが、終身雇用ではない非正規雇用がこれだけ増えているということになります。
また以前は転職すること自体が稀でしたが、今では転職は普通で特に不利にもなりません。転職によってスキルアップしたり、転職で給与アップとなる機会も多く与えられていますし、転職エージェントも数多くあります。
つまり、営業パーソンも含めて、社員が長く企業に勤めることはもはや前提に出来ない状況となっています。
優秀な営業パーソンの引き抜きも珍しくありませんから、自社の営業組織の営業パーソンがいつ辞めても困らない体制を構築しておかないと、自社独自の営業ノウハウの蓄積が出来なくなります。
1-3 少子化による採用難
少子化により労働人口が減り、優秀な人材、特に新卒の確保が年々困難になってきています。
日本では新卒を採用してゼネラリストとして教育、育成していくのが一般的ですが、まとまった人数の新卒の採用が期待できなくなってきていますから、ゼネラリストの育成ではなく、海外のように仕事をなるべく専門化して、特定部門の欠員を都度中途採用で補充するという形をとらざるを得ない時代になっています。
1-4 情報化
インターネットが発達した現在では、誰もが簡単に大量の情報にアクセスできるようになり、個人消費者も法人客も、購入する前にまず自分でいろいろな商品やサービスを調べて比較するのが当たり前となっています。
従って、自分で事前に調べるのが面倒な顧客を除いて、既に公表されている情報を繰り返し聞くために営業パーソンと応対するのは、時間の無駄と考える客が増えています。
また営業パーソンには、単なる営業トークによるプロモーションよりもむしろ、公開されていない顧客のためになるような有益な情報の提供が期待されるようになってきました。
1-5 IT化
従来手作業でやっていた企業やビジネスに関わる様々な業務は、どんどんシステム化しています。
経理作業に会計ソフトを利用するのは今や当たり前ですし、労務管理などのバックオフィスをサポートするソフトやアプリが、クラウドサービスも含めて次々と開発されています。
またバックオフィス向けだけでなく、顧客管理システム(CRM)や営業支援システム(SFA)、マーケティングツールなど営業向けのソフトも登場しています。
製造現場では既にロボットが使われるようになり、レジなどのいわゆるカスタマーサービスにも人工知能が導入されるようになってきました。システムや人工知能で代替可能な業務は、今後もどんどんIT化されていくのは間違いないでしょう。
1-6 アウトソーシングの普及
業務をソフトを使ってIT化するだけでなく、業務そのものをアウトソーシング、つまり外注する会社も増えています。経理業務だけでなく、最近は営業代行サービス会社による営業業務の外注も可能な時代となっています。
1-7 メールとモバイル
IT化に関連して、コミュニケーションの手段がメールや携帯電話、チャットなどに代わっています。
若い世代はもはや、卓上電話など殆ど使わないのではないでしょうか。
営業においてはFace to faceの商談がまだまだ重要ですが、これも遠隔地であればビデオコンファレンスでやってしまうことが増えています。
またアポも電話でとるのではなく、メールで確認するのを好む顧客も増えています。
2、営業パーソンと営業組織
次に、営業パーソンと営業組織について少し考えてみましょう。
2-1 営業パーソン
営業パーソンにはハンター型とファーマー型とあるとよく言われます。
ハンター型は新規顧客獲得、ファーマー型は既存客のフォローと維持が得意といった分類がされていますが、営業パーソンは人間ですから、この2種類にとまらずいろいろな性格や特徴があります。
会社の業績を上げるためには営業パーソン全員に頑張ってもらうしかないと、このような特性もあまり考慮しないで、全員一律に営業方法をトレーニングしていないでしょうか?
個々の営業パーソンの育成という意味でそれはそれで良いのですが、前項でも述べたように、終身雇用制が崩れて転職が普通の時代となっていますから、せっかく育成した営業パーソンもいつなんどき辞めてしまうかわかりません。
従って営業パーソンは会社の資産となりえません。
資産となるのは営業組織です。
組織内のメンバーが変わっても影響を受けずに組織として機能し続ける、そんな強い営業組織と体制を強化することが大切です。
2-2 営業組織
営業組織には、営業パーソン同士が競争しながら営業活動をする組織と、チームを組んで協力しながら進める組織とあります。
チームを組む場合でも、複数のチームがあってチーム同士が競争しながら営業活動を進める場合もあるでしょう。
ここでは特に、会社にとってどちらが良いのかは結論付けませんが、会社の業態や営業パーソンの特性により、一度自社にとってどちらのタイプの組織にした方が良いのか、考え直してみる必要はあるでしょう。
営業パーソン同士を競争させるのは、向上心を煽るという意味で有効ではありますが、他の営業パーソンを蹴落とすことで自分が優位にたとうとする風潮が出来てしまう危険性もはらんでいます。
これでは売れるはずだった自社の製品やサービスが売れないことになってしまいますから、本末転倒といえます。
競争するのは自社の営業パーソンではなく、他社の営業パーソンであることが、営業パーソンの間でしっかり認識出来ているでしょうか。
仮に自社の他の営業パーソンを蹴落とすような行為が発覚した場合、それを行った営業パーソンを解雇したり異動させることは、正しい処置ではありません。
営業組織がそのようになっている以上、誰もが同じことをしてしまう可能性があるからです。
チームで協力しながらやる形は、営業パーソン同士の無駄な競争はなくなりますが、ひとりひとりの責任が薄まってしまったり、責任のなすり合いとで終わってしまう場合があります。
また皆が仲の良いチームであれば効果も上がるでしょうが、同じチームの中で衝突してしまうような人がいる場合は、チームワークの達成は難しいでしょう。
3、営業組織を強化するには
では、営業パーソンというよりも営業組織を改善し、強化していくためには、どのようにすれば良いでしょうか。
3-1 営業活動を数値化する
KPIという言葉をご存知でしょうか。これはKey Performance Indicatorの略で、日本語では「重要業績評価指標」と呼ばれています。
ある目標を達成する為のプロセスを数値化して指標とするものですが、ここでは簡単に「指標」と考え、どのように営業組織に適用できるかを、もう少し詳しく説明します。
営業活動の目的は「売ること」ですから、営業部や営業パーソンの目標は「xx円売上げ達成」となるのが普通です。また決められた一定額の予算達成が目標となる場合もあります。
しかしまず最初の間違いは、売上げ金額を目標としてしまうことにあります。
会社の利益は売上げからコストや経費を引いたものとなりますから、たとえ売上高が増えても、その分コストや経費が増えてしまったり、売ったは良いが販売代金が回収出来なかった場合は、逆に利益は減ってしまいます。
営業パーソンは、売上げ金額を増やしたいばかりに、販売代金が回収出来るかどうか怪しいとわかっている客先に対しても安易に売ってしまうことがあります。
皮肉なことに、そうした客先ほど簡単に買ってくれますから、営業パーソンにとっては売上げを伸ばすのにうってつけです。
従って、営業パーソンのパフォーマンスを単に売上高で評価するのは、間違いです。
そこでKPIが注目されるわけですが、KPIは、
営業パフォーマンスを売り上げ高ではなく、売る為のプロセスを数値化して評価します。
この手法を導入すると、例えば一見一生懸命やっているように見える営業パーソンの売上げがなぜ伸びないのか、原因を解明することもできます。
KPIについては以下の記事を参考にしてください↓
営業 KPI : 営業はKPI(数字)が全て。勝てる設定方法・実戦で使える12選
では、営業プロセスはどのように数値化すれば良いのでしょうか。
難しいことではありません。
例えば以下の各営業パーソンの活動と結果を、1ヶ月集計して数値化してみましょう。
√ アポをとるために電話した、新規顧客候補の数。
√ アポをとるために電話した、既存顧客の数。
√ 訪問した新規顧客の数。
√ 訪問した既存顧客の数。
√ 引き合い(見積り依頼)をとった数。
√ 見積もりを出した顧客の数。
√ 成約数。
√ 失注数。
√ 成約したがキャンセルされた数。
√ 期日通りに支払われた注文数。
√ 期日通りに納品した注文数。
√ 期日通りに提出された営業レポートや日報の数。
3-2 数値化した営業プロセスを分析して評価する
数値化した上記のデータがそろったら、複数の営業パーソンの結果を比較・分析してみてください。
例えば以下のような仮説が出せるのではないでしょうか。
√ アポをとるために電話をした数が多いが実際にはアポが取得できていない営業パーソンは、アポの取り方が効率的でないか悪い。
√ 見積もりを出した数の割には成約に至った数が少ない営業パーソンの場合は、交渉の仕方を改善する必要があるか、見込み客の見極めを改善する必要がある。
つまり、安易に見積もりをばらまいている可能性がある。
√ 期日通りに支払いがされていない注文が多い営業パーソンは、客先の財務体質や支払いパフォーマンスをしっかり見極めずに安易に売っている可能性がある。
成約したがキャンセルされた注文がある場合も、同じ。
√ 期日通りに納品された注文数が少ない営業パーソン、つまり納期遅れが発生している営業パーソンは、売りっぱなしで顧客のフォローが出来ていない、納品する出荷部隊への指示が欠けていたりコミュニケーションがとれていない可能性がある。
√ 日報やレポートが決めれた日に提出されていない場合は、営業活動を効率よく計画的に行っていないことが考えられる。
営業パーソンおよび営業組織全体のパフォーマンスは、こうした要因を全て売上高と紐つけたうえで、総合的に評価することが大切です。
単に売上げ高で評価されると、営業パーソンにとってもプレッシャーとなり、売上げを達成するためならどういう手段をとっても良いとなりかねません。
またこうして評価した結果見つかる課題を個別の営業パーソン毎に改善することも必要ですが、営業組織として改善していくことも大切です。
では具体的に、どのような改善および解決方法があるでしょうか。一つの方法として、一連の営業プロセスを分割し、担当を分ける方法が考えられます。
3-3 営業活動のセグメント化
従来は一人の営業パーソンが行っていた一連の営業プロセスを、インサイドセールス(内勤)とフィールドセールス(外勤)の二つのプロセスに分ける手法を導入する企業が増えています。
大企業を除いて、マーケティング部と営業部とはっきり分かれている会社はあまり多くありませんから、ここではマーケティング的な業務も営業の一部とみなします。
尚マーケティングは、市場調査的な部分と販促的な部分とに分けられます。
ポイントは、プロセスを分けるだけでなく、担当する営業パーソンもその得手・不得手に応じて業務を分担することにあります。
例えばクロージングが得意な営業パーソンにはクロージングだけに専念させて他の業務で時間をとられないようにすれば、業務の効率が上がって短期間でより多くクローズできることも可能となるでしょう。
営業はやっているものの顧客との対面やクロージングは実は苦手な営業パーソンは、無理にプレッシャーをかけても逆効果ですし、それで良い結果が出るとは限りません。
それよりも、営業プロセスの他の分野を担当させて、業務の効率化に貢献できるか試してみることも、人材の有効利用となります。以下に、インサイドセールスとフィールドセールスのそれぞれの役割を説明します。
① インサイドセールス部分
インサイドセールスとは、顧客と対面しないで主に電話やメールなどの手段で以下を行う業務です。
インサイドセールスについては以下の記事を参考にしてください↓
インサイドセールスとは?『インサイドセールス 訪問に頼らず、売上を伸ばす営業組織の強化ガイド(茂野明彦 著)』
- マーケティング:
市場調査、つまり消費や需要に関する情報や競合相手の情報、誰がどこにどれだけ幾らで売っているかの調査を収集して分析する作業で、モノを効率的に売って受注率を高める為に非常に大切なプロセスとなります。
市場や敵を知らずに売りに出るのはめくら同然で非効率ですし、受注率も低くなるばかりか、競争相手に利用されることにもなりかねません。
顧客との会話で競合相手の情報などを得られる場合もありますが、情報化された現代ではいろいろな方法で市場の情報を収集できますから、この業務は必須です。
- インバウンド・マーケティング:
この場合のマーケティングとは販促の意味のマーケティングですが、インバウンド・マーケティングとは、自社の製品やサービスに興味をもってくれた顧客からのコンタクトを待つというものです。一見受身ですが、情報化が進んだ現在では非常に有効な手法となっています。
自社の製品やサービスを知ってもらうためにWEBサイトを立ち上げるのは今や必須ですが、それを更に進めたものがインバウンド・セールスとなります。
例えば,
SEO対策をかけてWEBサイトへのアクセス数を増やす
問い合わせページを設定する
アクセス者が興味を持ちそうな情報や資料を無料でダウンロード出来るようにして、ダウンロードする際にコンタクト先を送ってもらうように設定して後からコンタクトをとる
メルマガに登録してもらって定期的に有用な情報を送る
面白いコンテンツを提供してFacebookやTwitterなどで拡散させる
など、なるべく沢山の人に自社を知ってもらうための手法を駆使したものとなります。
またこれら強化する補助として、WEBアクセス分析ツールを活用してWEBサイトを改善していく方法もあります。サイトアクセス数だけでなく、何を経由して自社サイトにたどりついたかや、閲覧者の行動分析も行うもので、WEBサイトを持つ会社であれば使って当然のツールといえます。
情報化にともなって消費者や法人客の行動パターンも変わってきていますから、インサイド・マーケティングはその変化に合わせ、効率よく顧客候補に自社を見つけてもらうための新しいマーケティング手法となります。
- アウトバウンド・マーケティング:
アウトバウンド・マーケティングとは、宣伝や広告の掲載、展示会への出展など、自ら売り込む活動です。
一見能動的で営業活動はこうあるべきと思われるかもしれませんが、上記のようにインバウンド・マーケティングの効果を高めるツールがそろっている現在では、アウトバウンド・マーケティングは営業やマーケティングの主体ではなく、インバウンド・マーケティングを補完する販促活動になりつつあります。
- 見込み客の特定:
上記のマーケティング活動を通じて売れる可能性が高い見込み客を特定し、更に可能性の高い順に分類して、効率よくコンタクトをとって商談に進めるための作業です。
買う気があるかどうかわからない客も含めての飛び込み営業をする時代は、終わったといってもよいのではないでしょうか。
現在では、Googleでさえもあなたの検索履歴を検出・分析して、あなたが興味がありそうな広告を送ってくるくらいです。
この部分をマーケティング部またはインサイドセールス部門として業務を分けて独立させ、特定したアプローチすべき見込み客を、商談やクロージングが得意な営業パーソンにどんどん回していくのが効率的です。
- テレアポ:
電話で自社の製品やサービスを紹介して商談にすすめるためにアポイントをとる作業で、クロージングとはまた違ったコツやスキルが必要となります。
飛び込み営業的に不特定多数に無差別に電話をかけても嫌がられる場合が殆どですから、アポインターにとっては苦痛となりがちですが、
上記のインバウンド・マーケティングやアウトバウンド・マーケティングにより興味のある見込み客を先に特定し、その客に対してだけコンタクトをとることで、無駄な電話も減らすことができます。
② フィールドセールス部分
フィールドセールスは、顧客と対面して以下のプロセスを担当する外勤の業務です。いわゆる外回りですが、飛び込み営業はしないで基本的にアポがとれている客のみを訪問することになります。
- 商談とクロージング:
アポを取得した顧客に見積もりを提示して交渉する業務で、営業の真髄にあたる部分といってよいでしょう。それなりのスキルが必要で誰でも出来るものではありませんし、現状ではこれが唯一IT化出来ない部分となっています。
従って、クロージングが得意な営業パーソンにこの部分のみ担当させて集中してやってもらうか、手持ちの営業パーソンにクロージング手法を教育して育成することが必要となります。
- 顧客のアフターフォロー:
成約に至った客に対して、売りっぱなしではなく、納品されるまでしっかりフォローしたり、納品されてからも使い勝手に関してやクレームがないかを確認し、定期的にコンタクトをとって次の受注につなげるための業務です。
受注数を競うクロージングが苦手でも、こうしたファーマー型の営業が得意な営業パーソンもいますし、逆にクロージングが得意なハンター型の営業パーソンはフォローは苦手、という場合もありますから、ここでも適材適所による人材活用が図れます。
3-4 営業プロセスのIT化
マーケティング部分とインサイドセールス部分ではIT化が進んでおり、色々なツールやシステム、ソフトが提供されています。
これまで一人のセールスパーソンが抱えて管理、あるいはほったらかしにしていた名刺をデータベース化して、顧客の再発掘につなげる名刺管理ソフトから始まって、営業で活用できるツールには次のように様々なものがあります。
- CSR(顧客管理システム)
顧客情報をデータベース化するものですが、単なる住所や電話番号、担当者名といった基本情報だけでなく、いつコンタクトをとったかや、いつ何を売ったか、またはトライしたが売れなかったなどの履歴も管理し、分析できるシステムとなっています。
またデータベース的な機能だけでなく、情報管理されている顧客のグループ分けや、メルマガの一斉配信、ダイレクトメール発信、自社のWebサイトへのアクセス履歴と分析など、販促活動に便利な機能も備えられています。
インサイドセールスの殆どの部分には、このシステムが活用できます。
- SFA(営業支援システム)
営業パーソンの業務を可視化して情報を共有できるようにするシステムです。
SFAの機能としては例えば、
顧客との商談状況の記録・管理機能
見積もり書の作成機能
見積もりがなぜ成約に至ったか至らなかったかの分析機能
予算と実績の比較機能
月別売り上げなどグラフを使ったレポートの作成機能
顧客訪問や見積もり提出日などの営業タスク・スケジュール管理機能
日報作成機能
などがあります。
営業パーソンのペーパーワークを減らして業務を効率化し、クロージングに集中出来ることを目的とした営業パーソンのためのツールですが、マネジメント側からは、各営業パーソンの活動ややり方を管理しやすくなります。
また情報が一人の営業パーソンだけに蓄積されずに、全体で共有することが出来るというメリットがあります。つまり、営業パーソンが辞めるようなことがあっても情報やノウハウはシステムに残り、引継ぎに支障をきたしません。
- 営業代行
ITソフトやシステムだけでなく、営業業務を営業代行サービス会社に外注することも考えられます。
営業代行サービスでは、インサイドセールス部分のみ請け負うところもありますし、フィールドサービス部門も成功報酬型で請け負ってくれるところもあります。
フィールドサービスを請け負う営業代行会社では、クロージングが得意な優秀な営業パーソンが確保されていますから、自社の営業パーソンでどうしてもうまくいかない場合は、営業業務の一部または全部を委託してしまうという手段もあります。
4、営業マネージャーの役割
では、営業組織を上手く機能させて売り上げ向上につなげるための、営業マネージャーの役割はなんでしょうか。以下に、営業マネージャーがするべき点、注意する点を挙げてみます。
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4-1 営業パーソンの採用から関わる
新規に営業パーソンを採用する場合は、人事部に任せないで、自ら採用プロセスや面接まで参加することが大切です。
人の採用はシステムの導入とは違いますから、人間的な相性も日常業務に影響する大切な要因となります。優秀な営業パーソンだと人事が判断しても、営業マネージャーと相性が悪いと良い結果は出せません。面接だけで判断するのは困難ですが、営業マネージャーの意見も取り入れた採用とするべきです。
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4-2 各営業パーソンの得手・不得手を見極めて、適材適所に配置する
営業プロセスを分業化することで効率化を図るため、各営業パーソンの得意な分野と不得意な分野をKPIも参考にして見極め、適材適所に配置する指揮をとることです。
不得意もしくは適していないと思われる分野を無理やりやらせても、効果は出ません。時間とコストの無駄になりますから、限られた人材を有効活用するため、まず従来ひとりでやっていた業務を分けて、配置換えをしやすくすることを検討してみましょう。
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4-3 費用対効果を検討して、IT化を検討する
営業マネージャーは、もともと営業畑にいた人が殆どですが、えてして営業パーソンは経理と違ってITが苦手です。
せっかくトップダウンで導入したシステムを使いこなせない場合も、多くみられます。しかし時代がこれだけ変化しているなか、ITツールの利用なしには売り上げ改善は見込めません。自ら率先してITツールを勉強し、使ってみることが必要です。
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4-4 KPIを設定して、営業組織の営業プロセスを評価する
各営業パーソンの売り上げ高だけでなく営業の仕方も分析して、評価します。分析の結果は営業パーソンとも共有し、どこを改善すべきかを一緒に考えてもらうようにしましょう。なぜ思うような結果が出ないのか、自分でもよくわかっていない営業パーソンもいるはずです。
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4-5 営業戦略を立案する
経営者や営業マネージャーは、マーケティング戦略や営業戦略を決めた上で営業活動を始めるべきです。
戦略にもとづかない行動では、結果がでたとしても偶然過ぎず、次につながりません。
営業戦略とは、自社の商品やサービスをどのように売るかのシナリオを作ることですが、戦略をたてる前に、自社の商品やサービスについて詳細な知識を得た上で、他社の同種の製品やサービスと比べてどのような利点があるか、どのように差別化できるかを明確にする必要があります。
そしてその利点は、全ての営業パーソンと共有しなければならないのは言うまでもありません。
営業パーソンが自社の製品やサービスの利点に疑いを持っている限り製品は決して売れませんから、まず営業マネージャーが営業パーソンを納得させることが大切です。
また戦略は、市場の動向や競合先の動きによって柔軟に修正する必要がありますから、常に現在の戦略が正しいかどうかをチェックするのも、営業マネージャーの仕事です。
5、最後に
企業の売り上げは、営業パーソンに依存するのではなく、営業組織に依存します。
営業パーソンを個別に教育する前にまず、営業パーソンが入れ替わっても影響を受けない、時代に即した営業組織を構築することが大切です。
そして新しい営業組織の構築には、好むと好まざるに関わらず、情報化時代に合わせたITシステムの導入やインターネットを利用したマーケティングも不可欠です。
営業プロセスを分業化して効率化を図ることで会社の競争力も高まりますから、一人の営業パーソンが顧客の特定とアポとりまで全て行うという従来型の営業手法で進めている場合は、思い切って組織そのものを見直して分業化しはいかがでしょうか。