営業研修 ヒアリング  4/9

第二ステップ プロモーション

商談プロセスの第二ステップはプロモーションです。この時期は、お客様に会社・商品・サービスに関心を持ってもらうのが課題です。

お客様の好意を獲得して、警戒心を解きながら、信頼関係を構築することも課題となります。また、顧客の課題を解決する提案営業を展開してお客様との関係を強めます。

そこで、これらの商談の課題への対処法を検討していきます。

 

 

1 提案営業

製品やサービスの品質がレベルアップしたことから、製品やサービスによる圧倒的な差別化を行うことが難しくなってきました。そのため、特にBtoBにあっては、顧客の課題を解決する営業活動が注目されるようになりました。

ソリューションを提供することで、顧客企業の課題が解決すれば、感謝して担当営業マンやその会社を重要だと考えるようになります。


顧客企業の課題を解決する戦略についてご紹介します。もし、この戦略が採用されれば、見込み客企業から信頼され、商談を優位に運ぶことは間違いがありません。

 

1-1 差別化戦略の実施方法

その点で使えるのが「差別化戦略」の提案です。

差別化戦略は、ライバル社と競争を有利に展開するための戦略です。

実施方法は

  1. 顧客会社と顧客のライバル社のホームページを比較します。
  2. 顧客会社の強みと弱みをできるだけ多く書き上げます。
  3. ライバル社の強みと弱みをできるだけ多く書き上げます。
  4. 次のマトリックスに書き入れていきます。
ライバル社
 

顧客

強み 弱み
強み
弱み

 

このマトリックスの自社の強みでライバル社の弱みになる部分、つまり、「②」に書かれた項目が「差別化の軸」と呼ばれ、差別化実現のため、一番訴求していくべき項目です。たとえば、経済性がライバル会社の弱みで、顧客会社の強みがあり差別化の軸として浮かび上がった場合、経済性を重点的に訴求すれば、ライバル社は手も足も出ないという状態になるので、ライバル社を排除することができます。

この戦略を提出した時にあなたは業務パートナーとして貴重な存在になることでしょう。

 

1-2 自社の差別化戦略にも利用できる

他社と競合になった時、これを自社の差別化戦略にも利用できます。

自社の強みを知り他社の弱みを知って「差別化の軸」を中心に商談をすれば、お客様に自社の強みを訴求することでライバル社を排除することができるのです。

 

2 次回訪問、ニーズを聞き出すトーク

再訪の時、最初の一言がその後の商談の行方を大きく左右します。また。お客様のニーズを聞き出すことが求められます。

 

2-1 次回訪問の切り出しトーク

お客様の心理には「また来たのか?」という気持ちが内在しています。訪問した理由を述べます。言い訳をすることで、その人の行動を許すという心理が働きます。そこで、切り出し話法を身につけましょう。

 

1.   自尊心に訴える
前回の面談の内容を褒め、言い訳にする方法です。このように言われれば、悪く思う人はいません。
「先日は、貴重なお話を伺い、大変勉強になりました」
「今日も、〇〇さんのご意見を伺いたいと思い参上しました」

 

2.   好意を感じさせる
共感したことを前面に出したトークです。好意を示すことで顧客の好意を得ることができます。
「前回、〇〇さんのご意見に元気づけられましたので、また伺いました」

 

3.   有益情報を提供する
有益情報は誰でも欲しいものです。その心理を突いたトークです。
「先日の宿題を調べていたところ、耳寄りな情報がありましたので、持ってまいりました。」

 

2-2 ニーズを聞き出すトークの流れ

お客様のニーズを聞き出すためには、お客様の関心を引き出し、課題を掘り下げ、課題解決を提案していく必要があり、そのためのトークと流れを説明します。

 

1.   お客様の関心事を引き出すトーク
お客様がどのような事柄に興味や関心があるかを聞き出します。
「商品を選ぶときには、どのような点を重視しますか?」

 

2.   お客様の課題を掘り下げるトーク
「1」の答えを受けて、他社やその他の情報提供をして、お客様の問題意識を高めます。
「やはり、各社様も〇〇に関心をお持ちのようですね」

 

3.   問題解決を促進するトーク
実際に問題解決をするためには何が必要かを具体的に認識できるように話をして、お客様の気持ちを高めるようにします。
「その点については、△△についてのニーズが強いですね」

 

4.   問題解決に導く質問をする
具体的に問題解決をするように導きます。お客様が自ら解決するような質問をします。
「△△についてのご採用を検討されてはいかがでしょうか?」

こうして、ニーズを引き出し、問題解決に導いていくテクニックです。

 

3 お客様との信頼関係を築く方法

営業マンは、お客様との信頼関係がなければ、商談や提案を受け入れてもらえません。つまり、信頼関係を築くことこそ、営業活動をスムーズにさせる源なのです。そこで、お客様との信頼関係を築く心理テクニックを紹介しましょう。

 

【重要】信頼関係を深めたければ相手を喜ばせること

人間は、快をもたらすものを好み、不快をもたらすものを嫌います。同じように、お客様は自分に快をもたらすものに好意を感じます。

つまり、お客様の好意を獲得して信頼関係を築くためには、お客様を喜ばせることだということです。これが、信頼関係を構築する基本なのでよく覚えておいてください。

 

3-1 お客様の警戒心を解く「単純接触効果」

営業マンは、上司から「お客様に数多く合うように」と言われます。その理由は、お客様の購買タイミングを逃さないという意図もありますが、実は、お客様との信頼関係を築く役にも立つのです。人間は、会う回数が多いほど、好意を持つようになります。この心理傾向を単純接触効果といいます。心理学者のザイアンスが発見した法則なので、ザイアンスの法則とも呼びます。

 

単純接触効果について、ある大学で実験が行われました。女子学生を半分に分けて、Aグループには同じ男性の写真だけを見せました。Bグループの女子学生には色々な男性の写真を見せました。すると、Aグループに見せた男性の好感度が高くなったのです。Bグループでは顕著な差が見られませんでした。

 

この心理傾向が働く理由は次の通りだと説明されています。初対面の人の性格はわかりませんので、警戒心が拭いきれません。そのために心を開くことがなく、冷たく対応してしまいます。しかし、会う回数が多くなるにつれ、悪い人間でないことがわかってきます。そのため、警戒心が薄れていき、好意を持つようになるということです。

 

お客様と信頼関係を築きたければ、単純接触効果を働かせるために、お客様と会う回数をできるだけ多くことです。

苦手なお客様には足が遠のくものですが、それだからこそ、訪問回数を多くすべきです。自分が苦手と考えているということはライバル社の営業マンも苦手と考えているはずであり、ライバル営業より多く訪問して、信頼を構築すれば、苦手なお客様との信頼関係を築くことができることでしょう。

 

また、このプロセスで自分にも単純接触効果が働き、お客様に好意抱くことになるでしょう。このようなことから、お客様の頻繁な訪問が必要なのです。

 

3-2 お客様が信頼されたと感じる「自己呈示」

自己呈示というのは自分のプライベートな話をすることです。

信頼関係がなければ、プライベートな話をすることはありません。プライベートな話をするということは、ある意味で弱点をさらけ出すことです。信頼していない相手に弱点を知られると何をされるかわかりませんので、信頼している人にだけ自己呈示をするのです。

 

このようなことから、プライベートな話をされると、相手から信頼されたと感じ嬉しくなります。

私たちは、周囲の人から認められたい、信頼されたいという欲求を持っています。これを心理学者のマズローは「自我の欲求」と名づけました。

私たちは、様々な欲求を持っていますが、どのような欲求であっても願いが叶うと満足して嬉しくなります。

自己呈示をされた場合も、相手から信頼されたと感じて嬉しくなるのです。そして、そのお返しとして、お客様も自己呈示をしやすくなります。そうすると、お互いの距離が縮まることになるのです。

 

例えば、このような感じです。

 

営業マン「実は、子供が喘息で困っています」

お客様「私のところも同じ。でも、〇〇茶を飲ませたところ良くなったよ。今度持ってくるよ」

・・・・

営業マン「お茶、どうもありがとうございました。少し落ち着いたようです」

お客様「それは良かった」

このように話が広がって、お客様との距離が縮まってくることでしょう。

 

3-3 お客様の精神を安定させる「タッチング」

霊長類のコミュニケーションのひとつとして、グルーミング(毛づくろい)があります。グルーミングを行うことで、関係をスムーズにします。人間にも似たような行為が関係性を深めていることが証明されました。


アメリカの心理学者S.M.ジェラートはどういう状態の時に自分のプライベートな話をするのかという実験をしました。

その結果、聞き手(あなたのこと)が座るときに相手(お客様)に軽く触れて自分の方から、自己呈示、つまり先に聞き手の方からプライベートな話しをすることで、相手と親しく語り始めることがわかりました。

 

山梨医大の森千鶴氏らの論文「タッチングによる精神・生理機能の変化」によると、タッチングすると脳波のα波が増えるとしています。α波は精神安定を示す脳波です。つまり、タッチングすると精神が安定するのです。タッチングをすることで、精神が安定して、警戒心を薄めるため、相手の自己呈示に反応して、自分も自己呈示をしやすくなるということになります。

 

世界的ビジネスでは、握手がこのタッチング役を果たしますが、日本では握手の習慣はありません。例えば、書類を渡すときや肩の糸くずを取ることもタッチングのチャンスになりますので、試すといいでしょう。

 

3-4 口下手でも話し上手になる「傾聴」

営業マンといえば、話し上手だと思われがちです。自分は口下手で営業に向いていないと悩んでいる方もいらっしゃると思います。

しかし、そのような、口下手の方でも、「話し上手になる」方法があります。それが「傾聴」というカウンセリング・テクニックで、コーチング・テクニックにも応用されています。「傾聴」というというのは、相手の言葉に耳を傾けて聴くことです。これだけのことですが、次のような効果があります。

 

アフター・ファイブの飲み会での上司の悪口を言うとスッキリします。また、女性はガールズトークでストレスを発散します。

これは、話を聞いてもらうことで、心の中に溜まったストレスや不安などのドロドロしたネガティブな感情を吐き出すことから得られる効果です。これを心の浄化作用(カタルシス)といいます。

心を浄化してくれるあなたは、お客様にとって貴重な存在となり、あなたと話をすることが楽しみになることでしょう。聞き上手になれば、この効果を利用できることになるのです。ですから「話し上手は聞き上手」と言われるのです。

 

また、そればかりでなく、お客様は話を聴いてもらうことで、多くのことを話しますので、心の中をさらけ出すことになります。つまり、心を開くということです。こうして、あなたを信頼させる効果もあるのです。

 

しかし、お客様の言葉に耳を傾けるということですが、ただ聞いているだけでは、お客様は1分もしないうちに黙り込んでしまいます。そこで、カウンセラーが使うテクニックを紹介します。

ポイントは、お客様に「あなたの言うことを聞いていますよ」「あなたの話はとても面白いですよ」というサインを知らせるということです。このサインがお客様に伝われば、あなたが興味を持って自分の話を聞いているので、この話を続けて良いと考えて、発言は加速するようになるのです。

 

具体的には、頷くこと。

聞き手が頷くだけで相手の発言は5割も長くなるという研究成果もあります。それ以上の効果があるのが相槌を打つことです。相槌には次のような例があります。

 

  1. 「はい」「そうですね」「なるほど」など お客様の意見を肯定して受け入れます。そうすると、「これだけ賛同してもらえるのだから、この話を続けよう」という動機づけになります。
  2. 「大変でしたね」「良かったですね」 「大変でしたね」「良かったですね」というのは、感情を共有する相槌です。「こんなに心配してくれるのだから、これぐらいまで話をしても良いだろう」と考え、深い話までしてくれるようになります。
  3. 感情を共有するのは親密な証拠であることをお客様も知っており、心を開くことになるのです。
  4. 「それから?」「どうしました?」 この言葉には、その先を聞きたいという気持ち、心配している気持ちが含まれており、「これだけ自分のことを考えてもらえるなら」と、お客様の発言を促進することになります。
  5. 「それは~ということですか?」 この言葉を挟むことで、お客様の頭の中を整理することを助けます。

 

傾聴するときの態度

心ここにあらずで、別の書類を見ながら話を聞いたりして、部下の話を真面目に聞かない上司もいますが、これでは、報・連・相もしたくなくなります

。このように、お客様の信頼を得るためには、聞き手の態度が大変重要になってきます。

まずは視線ですが、相手の表情を見ることで、お客様はしっかり話を聞いていると感じます。また、前傾姿勢で聴くことで積極的に発言を聞いていると感じます。

 

腕組や足を組むこと、貧乏ゆすりなども相手に不快感を与えますのでNGです。

「あなたの話を聞きたい」というような態度をとることがポイントです。

 

4 コラム 傾聴の威力――弱小支社がトップレベルの支社へ

ある方がN生命保険会社のH支社の支社長として着任した時に経験したことです。

H支社は、生保レディ数が30名程度の小規模の支社でした。

N生命には、全国に100近く支社がありましたが、H支社の成績は「下の上」でした。その弱小支社が2か月の間にキャンペーンでトップに躍り出たのです。それが傾聴の力でした。

 

生保営業マンはほとんどが女性であり、価値観が男性営業マンとは異なります。その意味で、統率は非常に難しいもので、特にこのときのN生命は、経営の行き詰まりが報道されるなど、従業員の心は荒れており、当時の経営状況は最悪でした。

 

このような状況下で、H支社赴任にあたり、当時の営業本部長から「全員面接をしなさい」というアドバイスをもらいました。一口に全員面接といっても、実行してみると最悪の状況下です。会社への不満や上司への不満などドロドロとしたものの訴えの連続であり、針のむしろに座っているような面接でした。

しかし、それに対して、耳を傾けつつ、何とか協力してほしいということを語り続けてきた。結局、全員の面接を終了するまでに1か月を要しました。残念ながら、「頑張ります」という言葉はほとんど聞かれませんでした。何のために全員面接をしたのか疑いをもちました。

 

そうこうしているうちに、二ヶ月間にわたるキャンペーンが行われることになりました。第1回目の成績集計では、誰もが想像すらしなかったH支社が一躍トップを走ることになったのです。営業本部長も驚いて電話をよこしました。「何があったのか」ということです。「本部長に言われたとおり、全員面接をした」ということを告げました。

このように、閉ざされた心はどのようにしたら開くのか。実は、閉ざされた心も大きな叫びをあげている。「私の心の叫びを聞いてほしい」「私に賛同してほしい」これらは、多くの人間に共通した欲求だということを初めて知りました。

 

凝り固まった心を揉み解すことは、この欲求を満たすことで達成されるのです。つまり心の叫びを受け止めること、これが、傾聴の力です。

 

4-1 お客様が安心して心を開く「受容」

二つ目のカウンセリング・テクニックが「受容」です。「受容」とは話し手の発言を受け入れることです。

私たちは、自分の発言や主張が受け入れられると嬉しいものです。話をしている相手から受け入れられると、自分を認めて欲しい、尊敬されたいという「自我の欲求」が満たされために喜ぶのです。自分を理解してくれる人は仲間として貴重な存在となり、心を開き、信頼を寄せることにもなるのです。

 

お客様とのやり取りとしては、次のような会話が想定できます。

 

お客様Aさん「私はこう思うけど、上司から、違うと言われた」

営業マン「Aさんの考え方が良いと思いますよ」

お客様Aさん「私は短気なので、直さなければね」

営業マン「今のままでいいと思いますよ。Aさんは、時間を大切にする人ですから」

 

4-2 お客様と感情を共有する「共感」

三つ目のカウンセリング・テクニックが「共感」です。

「共感」とは、喜び、怒り、哀しみい、楽しみ、という喜怒哀楽の感情をお客様と共有することです。人は、感情を隠そうとしますので、感情を共有することは、親しい間柄でないと難しいものです。それだけに、間柄を親密にするためには共感することが重要なのです。

 

まず、共感するということは、共感していることを相手に伝えることが必須です。そのために、相手の発言から相手の感情を読み取り、その感情に適した表情をつくります。その表情はポジティブな表情とネガティブな表情の2つだけで構いません。というのは、喜怒哀楽の表情は、大きく喜・楽のポジティブな表情と怒・哀というネガティブな表情に分けることができるからです。

次に、共感する言葉があります。

 

例えば

お客様「昨日の社内プレゼン大成功だったよ」

営業マン「さすが!それは良かったですね。」

この場合は、ポジティブな表情で会話します。

 

お客様「子供が熱を出してね」

営業マン「それは心配ですね。熱の他にも具合の悪いところはあるのですか?」

この場合は、心配そうな表情で会話します。

 

4-3 似ているほど好感度がアップする「態度の類似性」

英国のタブロイド紙の「ディリー・メール紙」は部下が自分と同じような服装をすると、70%近い上司がその部下を好ましく思うというレポートを発表しました。この理由は、意見や仕草、好みが似ているほど、つまり態度が似ているほど好意が大きくなるという「態度の類似性」という心理が働いた結果だと考えられます。

 

私たちは、自分の考え方や意見は正しいと思いたがっています。そこで、周囲の人から自分か認められると、「自我の欲求」が満たされます。自分を認めてくれた人には好意を寄せるようになります。服装や態度が似ているということは、趣味や感覚が似ていることで、自分が認められていることだと考えるからです。

 

この心理を利用したペーシングという心理テクニックを紹介します。ペーシングというのは話し方や発言、仕草を相手に合わせることです。これで、態度の類似性が高まり、お客様の好意を得ることが出来るというものです。ペーシングの方法を紹介します。

 

1. ミラーリング
相手の行動やしぐさに合わせて同じ行動やしぐさをすることをミラーリングといいます。例えば、お客様がお茶を飲めばこちらもお茶を飲む、お客様がメガネを上げればこちらもメガネを触る、お客様が頭を触ればこちらも髪に手をやる、お客様が資料を見たら自分も見るということです。ただし、相手に悟られてしまうと違和感を与える事になるで、あまり多用しないようにしてください。

 

2. チューニング
感情や気分をお客様に合わせることです。お客様が明るい話をしているときは笑顔で対応します。これに対して暗い話をしているときは困った顔で対応することです。これについては、「共感」の項をご覧ください。

 

3. マッチング
相手の話し方に合わせることをマッチングといいます。相手の話のスピードやトーン、使用する言葉などを合わせます。特に方言を合わせることやお客様の使用する言葉を使用することが効果的です。

 

4. バックトラック
バックトラックとは、相手の発言の言葉尻を繰り返すことで、オウム返しすることです。マッチングの一つとして、お客様の好意を獲得する他、傾聴の時に使用すると、相手の発言を促す効果も期待できます。難しいテクニックではないので、ぜひ試してみてください。
お客様「今日は、上司から褒められて」
営業マン「褒められたのですか?」
また
お客様「今日は、上司から叱られて」
営業マン「叱られたのですか?」

 

4-4 お客様を好きになる「好意の返報性」

私たちには、好意を示されると好意をもって返すという心理があります。この心理傾向を「好意の返報性」と言います。例えば、近所の人から「おすそ分け」をもらうと何かお返しをしようと考えます。

バレンタインデーにチョコレートをもらうと、ホワイトデーにお返ししようというように考えます。ちなみに、ホワイトデーというイベントは、昔はありませんでした。「好意の返報性」を利用したお菓子メーカーの戦略が実ったのでしょう。

 

「好意の返報性」の実験があります。実験参加者をAグループとBグループに分け、Aグループの人には、これから合う相手(実験者)に好かれていると信じ込ませました。また、Bグループの人には、これから合う相手(実験者)に嫌われていると信じ込ませました。そして、10分間、実験者と会話させたところ、Aグループの人とは相互に好意が増し、Bグループでは好意が増すことはありませんでした。

 

このような「好意の返報性」を利用する方法としては、接待やお歳暮・お中元もありますが、「お客様を好きになること」です。お客様を好きになると、好いていることが表情や言葉に現れてきます。そうすると、お客様も好意を感じます。好かれるということは、自分が認められることですから、嬉しくなり、好意を感じることになるのです。

また、上記の心理テクニックを使うことで、お客様に好意を示すことができます。この行為によりお客様の好意を獲得できるのです。

 

お客様のためになる提案をすることです。お客様のためにと考えることによって、提案も熱心になります。この気持ちが通じるようになります。ちなみに、これが、お客様にメリットを示すことで、購買を促進するソリューション(提案)営業の考え方の底流がここにあります。

 

5 人を動かすテクニック

お客様を契約に誘導するなど、人間の行動がコントロールできたら素晴らしいと思いませんか?そのような心理テクニックがありますので紹介します。

 

5-1 褒めれば人は動く「オペラント条件づけ」

アメリカの心理学者B.F.スキナーによって理論化されたのが「オペラント条件づけ」です。「オペラント条件づけ」とは報酬(賞)により行動を促進し、嫌悪(罰)により行動を制御して、行動をコントロールさせようという心理理論です。

 

例えば、ドラゴンクエストやファイナルファンタジーといったロールプレイング・ゲームですが、戦闘で経験値を積むことでレベルが上がり、強い敵にも勝てるようになります。

また、お金を集めることで、武器や防具を手に入れて、どんどん強くなっていきます。レベルアップする時の興奮やワクワク感が忘れられなくなります。

この時の感覚が報酬(賞)になって、ゲームが楽しくなって寝食も忘れてしまうことになってしまいます。このように、成功体験がきっかけとなり、モチベーションが高まるのです。

 

アメリカの心理学者ハーロックが行なった実験によると、小学生を褒められるグループ、叱られるグループ、放置されるグループの3つのグループに分け、数回テストを行いました。結果は、褒められるグループの成績が一番良くなったということです。

 

つまり、賞賛(褒めること)は人を動かす力があるのです。

例えば、前にも触れたように、再訪の時に、「先日は、貴重なお話を伺い、大変勉強になりました」「今日も、〇〇さんのご意見を伺いたいと思い参上しました」「前回、〇〇さんのご意見に元気づけられましたので、また伺いました」と褒めれば、邪魔にしていたお客様も、快く話を聞いてもらえるでしょう。

 

5-2 顧客を褒めるツボ

「豚もおだてりゃ、木に登る」などという言葉もありますが、褒めることが良いといっても、歯の浮くようなお世辞を言っては、手の内を読まれてしまいます。

 

人間には、褒めるときに反応しやすい「ツボ」というものがあり、そのツボを褒めるようにすると効果的です。そのツボとは、「自己関与」の高い部分です。

 

「自己関与」というのは、関心の高い部分で興味のある事柄や仕事などのことです。例えば、ダイエットしている人に「スタイルが良い」と褒めると喜びますが、体型に関心がないとスタイルを褒められてもあまり喜びません。

 

このように、仕事や趣味、自信のある事柄などが「自己関与」の高い部分ですので、ここを褒めます。また、顔や足の長さを褒めるより、努力していることを褒めることが相手を喜びます。

このようなことから、「御社の皆さんは、すれ違う時に大きな声で挨拶してくれて、気持ちいいですね」などお客様の仕事ぶりを褒めることが良いでしょう。会社の良い点、担当者の良い点を探して、いつでも使えるようにしておきましょう。

 

5-3 決定権者に伝わる褒め言葉

営業マンが接触している担当者が支出を決定する権限がない場合があります。その場合は、窓口担当者に上司たる決定権者を褒める必要があります。

例えば、窓口担当者に「〇〇さん(上司)は仕事熱心ですね(ここでも自己関与の高い部分を褒めます)」と言うと、担当者は「××さん(営業マン)が褒めていましたよ」と報告することでしょう。

このように、人づてに褒めることで、信頼されます。

 

また、もう一つ効果的な担当者を褒める方法ですが、アメリカの心理学者エリオット・アロンソンとロバート・D・リンダーの実験があります。

実験参加者は4つのグループに分けられ、次のような評価を受けました。どの褒められ方が喜ばれたでしょうか、あなたも考えてみてください。

 

1.       終始プラスの評価を受ける

2.       終始マイナスの評価を受ける

3.       最初はマイナスの評価を受け、その後プラスの評価を受ける

4.       最初はプラスの評価を受け、その後マイナスの評価を受ける

 

その結果、「3」「1」「2」「4」の順で好感度が高いことがわかりました。

ですから、担当者を褒めるためには、「〇〇さんは、若い割に仕事は緻密ですね」という具合です。

ポイントは他愛のないところをマイナス評価することです。気にしていることを指摘すると気分を悪くします。また、最初に褒めあげて、ガクッと落とすのは、最初から最後までけなされるより悪いというのも面白い結果です。

相手を褒めることでも、事前に練習や検討をしておきましょう。

 

5-4 プライドをくすぐろう「自分史・自慢話」

次に紹介するのは、お客様のプライドをくすぐる方法です。誰にでも、自分が誇りに思っているエピソードの一つや二つはあるものです。

これを語るとき、人はその時に戻り、流暢に語り始めることになるものです。

お客様の自分史を語ってもらうことで、お客様との信頼関係アップに応用します。仕事でお客様が充実していた時期についての成功体験について語ってもらうのです。違う言葉で言えば「自慢話」をしてもらうことです。

 

例えば、お客様には「〇〇さんは、この会社で一番頑張ってこられたことについて、お聞かせいただけませんか?」「〇〇さんは、若いのに、この役職に付いておられ、色々な経験をされてきたのでしょうね?」と聞くようにしましょう。

 

お客様の自分史を語ってもらうことには次の心理効果があります。

 

1.       明るく元気になる
お客様の自分史を語ってもらうと、表情が明るくなり、元気になって流暢に話し始めます。自分が素晴らしいと考えている体験を思い出すと、その時の感情まで想起されます。その時の熱い想いが蘇ってくるのです。

 

2.       近親感が高まる
これをお客様に使うと、お客様も目を輝かせながら、昔の話をしてくれることでしょう。いわゆる自慢話ですね。自慢話に付き合うことで、お客様も良い体験を想起して、気分が良くなります。気分がよくなると、「気分一致効果」という心理が働き、好意を感じるようになります。上司と部下の間も同じで、部下も良い体験を想起して、気分が良くなり、好意を感じるようになります。

中には、「話すようなエピソードはない」という謙虚な人もいることでしょう。そのようなときは「強いて言えば」と背中を押してやれば、少しずつ話し始め、最後には熱く語り始めるものです。

このテクニックを使うときは、相手に話をしてもらうことですから、傾聴のテクニックにある頷きや合いの手を入れることです。

 

 

 

 

 

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